- 開催:10/10(土)-10/11(日)
- ドライバー:#1 S.Yoshizawa
- REPORT:東風谷 高史(ドライビングコーチ)
初めての岡山、初めてのレース。準備してきたことは、通用するのか。
10月10日・11日、岡山国際サーキットにてBMW & MINI Racing 2026 Rd.5が開催。
DGMSから、S.Yoshizawa選手(株式会社トリコローレ東都)がBMW M2 Racingでレースデビューを果たしました。
結果は予選3番手、RACE9・RACE10ともに3位。
初めてのレースとしては上出来だったと思います。
ただ、今回お伝えしたいのは結果だけではありません。
そこに至るまでの準備と、レースウィークを通じて感じたS.Yoshizawa選手の成長について、アドバイザーの立場から振り返ってみたいと思います。


4月から始まった挑戦
S.Yoshizawa選手がトレーニングを開始したのは、今年の4月。
それから取り組んできたのは、砂子塾の広場トレーニングと東京バーチャルサーキットでのシミュレータートレーニングです。
実車のBMW M2 Racingに初めて乗ったのは、レースのおよそ2か月前。富士スピードウェイでの走行でした。
どうしてもBMW M2 Racingの走行スケジュールと仕事の調整が出来ず・・・。
実車マイルは富士でのBMW M2 Racingを1回。
S.Yoshizawa選手のマイカーで鈴鹿トレーニングを1度したのみ。
そして次に実車へ乗ったのが、今回の岡山のレースウィーク。
つまり、レーシングカーに乗った経験は、1日だけ。
しかも、岡山国際サーキットは今回が初走行です。
事前に岡山で練習する機会も模索しましたが、サーキットの練習走行日と仕事のスケジュールが合わず。
そんな状況で、いきなりレースデビューを迎えることになりました。
最初の目標は「無理せず走り切ること」
金曜日、S.Yoshizawa選手は初めて岡山国際サーキットを走りました。
コースへ送り出すとき、私が考えていたのはラップタイムではありませんでした。
まずはコースを覚えてクルマに少しでも慣れる事。
まだ速く走らなくても良い、確実に周回を重ねて習熟する事が先決です。
クルマを壊さず、無理をせず、走行を終えること。
岡山初走行、BMW M2 Racingへの乗車もまだ2回目。
最初からタイムを求める状況ではないと考えていました。
ところが、走り始めてみると予想以上に落ち着いている・・・。
操作に大きな乱れがなく、ラップタイムも安定している・・・。
初めての岡山、実車に乗るのは2回目とは思えない走りでした。
そこで、私のコーチングも少しずつ変わっていきました。
最初は「安全に走り切ること」。
それが、走行を重ねるうちに、「これなら、あと1秒は削れる」という、ラップタイムを意識した内容へ。
ただ「速く走れ」と言うのではなく、今の走りのどこを変えればタイムにつながるのか。
一つずつ課題を整理しながら、走行を進めていきました。
正直、金曜日の時点でここまでタイムを意識したコーチングに切り替えられるとは思っていませんでした。
予選3番手。初レースで見せた落ち着き
迎えた土曜日の予選。
S.Yoshizawa選手は1分44秒479を記録し、BMW M2 CS Racing Class(BMW M2 RacingとBMW M2 CS Racingの混走)の4台中3番手を獲得しました。
トップとの差は1.946秒。
経験のあるドライバーたちと比較すれば、まだ差はあります。
それでも、岡山初走行から始まったレースウィークを考えれば、十分に評価できる結果でした。


そして迎えた日曜日決勝 RACE9
レース中、一度は4番手へ後退します。
しかし、そこからが良かった。
コース上で経験のあるドライバーとバトルし、オーバーテイク。
自分の力で再び3番手へ順位を戻し、そのままチェッカーを受けました。
初めてのレースで、ただ完走しただけではありません。
実際にライバルと競り合い、ポジションを取り戻した。
これは本人にとって、非常に大きな経験になったと思います。
決勝 RACE10、トップとの差は0.794秒
RACE10も3位でフィニッシュ。
さらに、決勝中のベストラップは1分43秒156を記録しました。
トップの加藤選手(Elbe Racing)が記録した1分42秒362との差は、わずか0.794秒。
RACE9で記録した1分43秒865からも、0.709秒のタイムアップです。
もちろん、ベストラップが近いからといって、レース全体で同じ速さがあるというわけではありません。
実際、ゴールタイムではトップとの差が18.230秒あります。
まだまだ改善できる部分はあるということです。
それでも、初めて走る岡山国際サーキットで、レースウィークを通じてここまでタイムを縮めたことは、素直に評価したいと思います。
金曜日は「無理せず走り切ろう」だったのが、日曜日にはトップのベストラップから0.794秒落ち。
今回の成長を象徴する数字となりました。
速さだけではない、ドライバーとしての成長
今回、私がもう一つ印象に残っているのは、S.Yoshizawa選手のレースに向き合う姿勢です。
レースに出るということは、ただクルマを運転することではありません。
車両を準備するスタッフがいて、チームがいて、支えてくれる人たちがいる。
今回、S.Yoshizawa選手は他のドライバー候補生2名への配慮も忘れず、スタッフへの感謝も感じられました。
そして、走ることへの責任感。
これまでは、自分が上手くなることが中心だったかもしれません。
しかし、実際にレースを経験したことで、自分一人ではレースはできないという意識も芽生えたのではないかと思います。
これはラップタイムには表れない成長です。
速く走ることはもちろん大切ですが、チームの一員としてどう行動するかも、レーシングドライバーには欠かせないことだと思っています。
広場トレーニングとシミュレーターで、どこまで準備できるのか
今回の挑戦は、私自身にとっても興味深いものでした。
4月から続けてきた広場トレーニングとシミュレーター。
レーシングカーでの実走行は、レース前にわずか1回。
もちろん、シミュレーターだけで実際のレースをすべて学べるわけではありません。
タイヤの感覚、他車との距離感、レース中の判断など、実車でなければ経験できないことは数多くあります。
それでも、今回のS.Yoshizawa選手の走りを見て、事前に準備できることは想像以上に多いと感じました。
広場でクルマの挙動を理解し、操作の精度を高める。
シミュレーターでコースを覚え、走り方を考え、同じ操作を繰り返す。
そして実車では、それまで準備してきたことを確認し、修正していく。
こうした積み重ねが、初めてのコースでも落ち着いて走れる土台になっていたのだと思います。
ただし、今回の結果だけで、この方法が誰にでも同じように通用するとは言えません。
S.Yoshizawa選手自身の理解力、取り組む姿勢、そして現場での適応力があってこその結果です。
それでも、限られた実車経験の中で、ここまでできることを見せてくれたのは確かです。
レースデビューは、ここからがスタート
予選3番手、決勝2レースともに3位。
そしてRACE10では、トップのベストラップから0.794秒差。
レースデビューとしては上出来だったと思います。
しかし、ここで満足してはいけません。
1周の速さだけでなく、レースを通じた安定性、バトルの組み立て方、状況判断など、これから身につけることはたくさんあります。
一方で、初レースでバトルを経験し、自分の力でポジションを取り戻したことは、次に繋がる大きな一歩になりました。
そして何より、今回のレースを通じて、会社を代表して走る事への自覚も少し芽生えたように感じています。
4月に始まった挑戦が、ようやく実際のレースという舞台につながりました。
速さは、これからまだ伸ばせる。
レースの経験も、これから積んでいけばいい。
今回レースを経験できたのはS.Yoshizawa選手一人ですが、そこで得た経験を自分だけのものにせず、他の候補生にも共有していく。それも今回レースを任されたS.Yoshizawa選手の役割だと思います。
レースデビューはゴールではなく、ここからがスタートです。
S.Yoshizawa選手、そして今回の挑戦を支えてくださった関係者の皆様、DGMSメンバー、お疲れ様でした。

















