BMW & MINI Racing 2025

M2 CS Racing Series

Round1(第1戦-第2戦)

富士スピードウェイ[静岡県]
  • 開催:3/15(土)-3/16(日)
  • ドライバー:石井 一輝
  • REPORT:岩岡 万梨恵
  • Photo by Wataru Tamura

こんにちは!
今年もDGMS(ダイワグループモータースポーツ)のチームレポートを担当させていただきます、レーシングドライバーの岩岡万梨恵です。

2025年BMW&MINI Racing ROUND1富士スピードウェイ、開幕戦でのレースレポートをお届けします。

DGMS発足から6年、そして昨年念願のチームチャンピオンを獲得。
しかし、ドライバータイトルを獲ったことがまだありません。

そんな今年の目標は「チーム&ドライバーチャンピオンの獲得に向けて魅せるレースをする」

レース結果はいかに!?
まずは予選です。

予選はぎりぎりもつかな?という期待を裏腹に予選の時間が近づくにつれて降り始める雨。雨脚は次第に強くなっていきます。
予選スタートと同時にピットを飛び出したDGMS。
昨年チームチャンピオンを獲得したからか、自信に満ち溢れ颯爽とコースインしていきます。
序盤からしっかりタイムを出し、石井選手はトップタイムで、2位の選手と1秒以上の差を付けます!
次第に雨から雪に変わり、タイムが出ないと判断しタイヤ温存も兼ねてピットイン。
その後も破られることなく、見事ポールポジションを獲得しました。

予選を終えた石井選手

とても冷静に、そして早い段階でタイムを出し、切り上げられたので、形としては良い予選内容だと思います。昨年の秋から良い流れが続いており、その流れを絶やさず、そして今年の勢いを作る大事な1戦なので、1瞬も気を抜くことなく、ベストを出して、ぶっちぎります。

チームの中でも「1位を獲って当たり前」と自分自身にプレッシャーをかけて、すべて1位を取るんだ!という強い気持ちが伝わってきました。

そして翌日決勝レース。
天候は、雨。
しかも決勝レース1が近づくにつれて雨脚が強くなっていきます。
気温も低く、タイヤは温まるのだろうか?雪に変わらないか?チームにとって心配事の多いレース前であったように感じます。

雨のレースではレインタイヤ(雨用の溝付きタイヤ)を履き、溝で水を吐き出し走ることでハイドロを防ぎ、走ることができます。しかし、タイヤが温まらないと思うようにタイヤ性能が発揮出来ません。
そのため、タイヤが温まるまでの前半は非常に滑りやすく、ドライバーにとっても針に糸を通すかのような一時も気を抜けない時間が過ぎてゆきます。

雨が強いということで、セーフティーカー(先導車)スタートとなります。
これは、セーフティーカーが決められた速度(大体60~100㎞以内)でゆっくり走行しコース状況を見ながら、レースを始めても危険ではないという判断が下るとレースがスタートするという仕組みです。

遅い速度で走るため、ブレーキを使ってホイル、タイヤに熱を入れる、車両を左右に振ってタイヤのサイドを温める方法があり、いかにしっかりタイヤを温められるかがカギになります。
そして、セーフティーカーがいなくなり、スタートの主導権は石井選手に委ねられます。
どこで加速するのかも作戦でライバルを引き離せるように、加速のタイミングも重要なポイントになります。

が…

スタートとなる周、石井選手は富士の罠にはまってしまいます。

実は富士スピードウェイの13コーナー、何年か前に路面改修が入り、途中までグリップが低く、丁度車の向きを変える不安定になるポイントから路面が少しグリップするという特に雨だと気を付けなければならないポイントとなります。
また、ブラインドコーナー(先の見えないコーナー)ということもあり、ラフにアクセル操作をするとすぐにくるんっと回ってしまうような少し意地悪なコーナーです。

そんな13コーナーで石井選手は後続を引き離そうとアクセルを踏み込んだ瞬間、リアがくるっと滑ってしまいスピンをしてしまいます。
その瞬間ピット内はざわつき、車両トラブルなのか、石井選手は大丈夫なのか?このままレースは走れるのか?そんな不安がチーム全体を包みます。

幸いどこにもぶつかることもなく、車両も異常がなかったため復帰しますが、最後尾まで落ちてしまいました。

走っている車両から「やってしまったーーー!!」と叫んでいるように見えます。

ただ、ここであきらめないのがDGMS。
今までも数々の奇跡を見せてくれました。

雨の中、バトルをすること、ましてや速度の違う他クラス車両を抜くのは、現役ドライバーにとっても緊張の一瞬です。
また、雨が強くなるとウォータースクリーンと呼ばれ、前の車の水しぶきで視界不良の中を走らなければなりません。

その中で、1台1台確実に抜き、最後尾の14位まで落ちた順位が、気が付けばクラス6位まで上がります。

大変滑りやすい状況で、スピン車両がいたり、荒れたレースの中、なんと石井選手はただ一人、他車より2秒も速いタイムで走行し、最終ラップにさらに一台追い抜き、クラス5位でチェッカーを受けました。

これだけ冷静に対処し、順位を上げて帰ってきたこと、そしてダントツの速さを見せたことが大変素晴らしい!と感じたとともに、見えていた勝利が零れた瞬間はチーム全体、非常に悔しいことであったと感じます。

決勝レース1を終えた石井選手

やってしまいました。過去一番悪いコンディションで、速さは見せられたのですが、始めからやっておきたかったです。2戦目は失うものはないので、しっかり前を向いてきちんと勝って取り返せるように集中していきます。本当にすみませんでした。

金メカニック

スタートする時は今回1位を取るぞ!と意気込んでいましたが、スタートと同時にトップの車両が入れ替わっており、一気に不安へと変わりました。車は大丈夫なのか?走れるのか?心配でしたが、このまま走れるとのことで安心しました。やってしまったなという気持ちはありましたが、ぶっちぎりのファステストを獲れていたので、最初だけ悔しいなと思います。今年は自分がメカニックを引っ張っていかなければならないので気が引き締まります。

今回はDGMS Circuit Dayを開催し、Shonan / Toto BMWのお客様をサーキットにお迎えしました。
レース観戦はもちろん、e-DGMSのシミュレーター体験やトークショー、最後は自身の愛車でサーキットをパレードランという盛りだくさんの内容。
多くの方に参加していただき、レース中はゲストラウンジから見えるコースに皆さん張り付きながら応援をしていただきました。DGMSチームはこんなに多くの方に愛され、応援いただいていることを強く感じました。

悔しい結果なだけに、次はやるよね!とみんなの期待が大きくなるDGMS。
応援団含めみんなの気持ちを乗せ迎えた決勝レース2。

今度は更なる悩みが襲ってきます。
決勝レース2に向けて次第に雨は弱まり、小雨は降っているがこの後雨は止むのか?という悩み事が増えました。というのも、このままレインタイヤで走るのか、スリックタイヤに変えるかチームの作戦によってレースの命運が変わります。
路面が濡れているうちはレインタイヤが強く、路面が乾いてくればはるかにスリックタイヤの方が、グリップが高く速く走ることが出来るからです。

ルールに則り、DGMSは5番手グリッドからのスタート。ここから雨が止み、コースが乾くことを予想しスリックタイヤに替えるチームもいる中で、まだ小雨が降っているため、コースは乾かないだろうという判断の元DGMSはレインタイヤを選択。これが吉と出るか、凶と出るか、いよいよレースはスタートです。

決勝レース2は通常通り、ローリングスタートで始まりました。
先ほどの悔しさを爆発させたように一気に前に出ていく石井選手、2番手まで上がってきます。
一位との差は1秒以内という中で、思うように差が縮まりません。
少しずつ路面コンディションも乾きますがまだまだ滑りやすく、一つのミスが大きな差を生んでしまうような厳しい状況が続きます。

東風谷コーチからは常にトップのタイム、石井選手のタイムを伝え、冷静に落ち着いてタイムが上がるように指示をしていきます。
「レースは最後まで何が起きるかわからない」
最後まで諦めず、必死に食らいつきますが、優勝まで一歩届かず、2位表彰台を獲得しました。

またも、見えていただけに逃した1位という称号は無情にも零れ落ちてしまいました。
ただ、ここでしっかり走り切り2位表彰台を獲得したこと、ポイントを獲れたことはとても前向きであると感じます。

決勝レース2を終えた石井選手

勝たなきゃ!と思っていただけに、自分の中で納得できるものはなかったです。レインなのか、ドライなのか、セットが非常に悩んだ部分があり、走っていて外したのかな?と思った瞬間、プッシュしきれなかったのが原因です。応援してくれた皆様に本当に申し訳ないです。次戦は鈴鹿で好きなコースであり、得意でもあるので、今回の悔しさをバネにぶっちぎります。応援よろしくお願いします。

今回のレースを振り返って小川監督

開幕戦なので100%順調にいくとは思っていないが、今年もハラハラするなという印象でした。勝てる要素はありましたが、それが上手くハマりませんでした。ここからしっかり巻き返して確実にポイントを重ね、最終的に笑えるようにしていきます。次回以降も優勝を目指し、セッティングや連携を深めて細かいところまでしっかり詰めていきます。

ROUND1が無事終了し、ドライバーランキングは現在3位となりました。

レースが終わるたび、「すみませんでした。」の一言。この言葉が私はとても印象的でした。
DGMSはドライバー、監督、メカニック、マネージャー全てが社員で構成されています。そのため、このレースに参戦するためには、全員が通常業務をこなしながらレースの準備を行わなければなりません。

開幕戦に向けて、全員が「勝つために」準備をしてきたことを、わかっているからこそ、一つのミスで結果に繋がらなくなり、責任を感じます。
やはりチーム全員が同じ目標に向かい、ミスをしないように作り上げていく。このチーム力が大切で、DGMSの絆はこの6年間で強く結ばれていると私は近くで見ていてそう感じます。

シーズンはまだまだ始まったばかり。
次戦は5月10~11日鈴鹿サーキットにて開催です。
DGMS、悲願のチーム&ドライバーチャンピオンに向けての道をぜひ、応援よろしくお願いいたします!