Fanatec GT World Challenge Asia 2022

TC INV Class

JAPAN CUP ROUND 2[TC INVクラス]

富士スピードウェイ[静岡県]
  • 開催:7/23(土)-7/24(日)
  • ドライバー:石井 一輝(ファイブスター東都)、東風谷 高史(DGMSチームアドバイザー)
  • REPORT:岩岡 万梨恵

DGMS(ダイワグループモータースポーツ)のチームレポーターを務めます、レーシングドライバーの岩岡万梨恵です。今回は、7/23~24富士スピードウェイにて行われましたFanatec GT World Challenge Asiaの様子をお届けします。

急遽決まった国際戦。ダイワグループにとって更なる挑戦の第一歩に踏み出します。
GT World Challenge Asiaとは、GT3、GT4車両が混走し、60分レースを2回行います。前回より新設されたインビテーションクラス(TC INV)に、DGMSが参戦しました。

ドライバーは引き続きファイブスター東都社員の石井一輝選手に加え、いつもチームアドバイザーを務めるレースドライバーの東風谷高史選手2名で挑みます。
同じBMW M2 CS Racingですが今回はタイヤがピレリとなりフィーリングも変わる中、事前練習は本番前の一日だけ。どんなに厳しい状況でも与えられた状況の中でまとめるのがDGMSの強み。その強みを活かしながら前日走行も順調にノルマをこなしていきます。

車両の調子も良くいよいよ始まる世界戦。9時40分から15分間の予選が2回行われ、石井選手、東風谷選手、それぞれタイムアタックします。それぞれの予選の結果で、石井選手がレース1、東風谷選手がレース2のスタート順位が決まります。今回インビテーションクラスということで正式な順位はつきませんが、ライバル車両はもちろん、上のクラスに食い込む勢いで予選に臨みます。

まずは石井選手。前日までのフィーリングを確認しながらアタックを始めます。計測1周目にして自己ベストタイムを0,7秒と大きく更新し1,51,055をマーク。次の周もアタックしますが、更新は出来なかったものの安定してタイムを刻んでいきます。アタックを終え、結果はクラス1位をマークして予選終了。
続いて東風谷選手。石井選手から繋いだバトンをしっかり握ってアタック開始。こちらも計測1周目から自己ベストタイムの1,50,9を出し、2名ともクラス1位で予選を終えました。

いよいよ、14時45分から60分のレース1が始まります。スタートドライバーは石井選手。初めての国際レース、初めてのローリングスタート(車両が停止することなく、隊列を組み、走行した状態でのスタート。)という初めて尽くしの状況で、石井選手は前日までの数日間、眠れないほど緊張していたそうです。

全クラス混走となるレースでは、25台のマシンが一斉にスタートするという中々スリリングなレース。スタートが近づくにつれ、チーム全体が緊張した空気に包まれていきます。 そんな中レースはスタート。

25台が一気に1コーナーに飛び込む姿は大迫力。石井選手も冷静に対処し混戦の中を駆け抜け、クラス違いのGT4車両を2台抜くという大健闘ぶり。その後も順調に走行し、30分を超えたあたりで東風谷選手へドライバーチェンジを行います。

順調に見えたレースですが、ここで難題に当たります。今回、燃料無給油、タイヤ無交換作戦で60分を乗り越える作戦で挑んだDGMS。30分を超えるレースはBMW M2 CS Racingで挑むのは初めてで、ブレーキが想像以上の消耗により効きづらい状況に。ブレーキをかばいながら走行しなければなりません。

また、残り10分を切ったあたりで、燃料残量が底をついてきます。燃料計とにらめっこをしながら残り1分。ガス欠してしまうと努力が水の泡となってしまうため、なんとかゴールに繋げようとチーム全体に力が入ります。燃料ぎりぎり持たせることができ、なんとかゴール。
まるでジェットコースターのようなレース展開に目が離せないレースとなりました。残った燃料は1Lをきるほど。ぎりぎりまで攻めた戦いぶりに感動しました。

「初めての国際レースでしたが、スタートしてしまったらどこで抜いてもらおうとか落ち着いて対処できました。」と石井選手。DGMSの活動を通して3年目となりますが、すっかりレースに慣れ、落ち着いて挑む姿に、チーム監督の小川さんや東風谷選手も石井選手の成長を感じたとのこと。最後まで気が抜けない状況に、私自身も久しぶりにドキドキしながらレースを見届けました。

ほっとしたのもつかの間、翌日のレース2に向けて反省と作戦を練っていきます。翌日はスタートドライバーを東風谷選手、レース後半のコントロールを石井選手が担当するため、レース1の車両のフィーリング変化を確認していきます。

そして翌日レース2。
レース2は東風谷選手の予選の結果、クラス1位総合23位からスタートします。スタートドライバーは東風谷選手。「レース1では石井選手の落ち着きが良い意味で予想外であった。レース2ではレース1のデータを元に作戦を立て、その通りにドライバーがどれだけきっちり走れるかが課題。」と東風谷選手。

東風谷選手は長年のレース経験からローリングスタートは何度も経験があるため抜群の安定感を見せます。スタートと同時にポジションを一つ上げ、タイムも安定し、周回を重ねます。12周が過ぎた頃、リアタイヤの食いつきが減り、オーバーステアが強い印象に変わり、車両の状況を無線でピットに都度伝えていきます。このタイヤの状態をきっかけに作戦よりも早めに石井選手に交代しようとピットの判断もあり、30分を走ったところで石井選手に交代しました。

やはりブレーキの消耗が激しく、止まりづらい状況の中で石井選手も安定した走りを見せ、周回数を重ねていきます。残り15分を過ぎたところで燃料との戦いが始まります。「燃費走行をしているつもりでも周りのペースにつられて早く走ってしまい、ペース配分が難しかった。」と石井選手。早いペースで走ってしまい、燃料が持つのか、チームをヒヤッとさせる場面もありました。しかし東風谷選手の無線を通して、早めのシフトアップ、ダウンをしたり、アクセルを早めに離して空走時間を作ったりと石井選手にとって初めての車両の走らせ方で走行し、チームでつないでいきます。60分のレース2も無事にチェッカーを受け、2レース続けてクラス1位でゴールすることが出来ました。

初めての国際レースを終えて石井選手

バトンを受けてゴールまで繋げることがレース2大きな役割。レース1よりも責任感を感じて、出番が近づくにつれて緊張しました。また、海外レースは、抜き方やスピード感が今までのレースよりもアグレッシブでしたが、その中で冷静に走れたことは自信に繋がりました。

共に戦った東風谷選手

ガソリンが持つのかひやひやした点もありましたが、なによりゴール出来てよかったです。チーム自体も立ち上げ当初から見ていて、車両もどんどん速くなっているにも関わらず、チーム全体の手際が良くなり、一人一人が落ち着いて挑めたレースウィークでありました。これは必ず次の岡山にも繋がると思います。レースを通して石井選手の走行の傾向もより深く知ることが出来たのと、課題を見つけたので、次の岡山に向けてどう修正してくるのか石井選手がどう成長するのかを見ていてほしいと思います。

今回のGTアジアでは、急遽M2クラスが新設され、参戦が決まりましたが、参戦するにあたり、監督の小川さん、マネージャーの伊藤さんをはじめ、右も左もわからない中で準備を進め、GTアジア富士戦への参戦が叶いました。

これらの準備を振り返る監督の小川さん

全く分からない状態、かつすべて英語のやりとりで、全体的にレギュレーションも厳しく、とても大変でしたが国際レースを通じて良い経験をすることが出来ました。

実は小川監督はDGMSが始まる際、仕事がとても忙しく、社長から監督を抜擢されるも一度はお断りしたんだとか。しかし、会議の中で改めて監督をお願いされ、現在まで監督として勤めていらっしゃいます。
レース自身は以前帯同していた経験はあるものの、チームをまとめなければならない監督業を担当すると決まってからは、1から勉強しながら、今日まで過ごされてきたそうです。
昨年はシリーズ1年通して参戦したおかげで、今年の初めには、チームメンバー一人一人がそれぞれやることを把握し、新しい仲間が増えても、チームとしてまとまりはじめていると小川監督。
DGMSは、1戦迎えるごとに、メンバー一人一人がそれぞれのやるべきことを自分たちで把握し、それぞれが努力して1つの形になっていく姿に、見ていて勇気をもらえます。

DGMSの最終目標はスーパー耐久24時間レースや国際レースに参戦すること。
今回の経験は目標へのステップになったと小川監督。DGMSの挑戦はまだまだ続きます。次戦はBMW&MINI Racing M2 CS Racing SeriesとMINI CPSクラス Round4(第7、8戦)です。DGMS初の岡山国際サーキットでのレース、今回の国際レースで一回りも二回りも大きくなった姿を見るのがとても楽しみです。