- 開催:4/13(土)-4/14(日)
- ドライバー:石井 一輝
- REPORT:岩岡 万梨恵
- Photo by 川上 浩之
DGMS(ダイワグループモータースポーツ)のレースレポートを担当させて頂きます、レーシングドライバーの岩岡万梨恵です。
BMW&MINI Racing ROUND1富士スピードウェイの様子をお届けします。
いよいよ2024年シーズンの始まりとなる今回。
昨年の感動的な最終戦から4カ月。長いようで短いオフシーズンは、ドライバー、そしてチームにとってもたいへん重要な準備期間となります。
「ライバルは誰が参戦するのか」、「みんなどれくらい練習をしているのか」、そして「自分がどこまで戦えるのか」、今年の挑戦がいよいよ始まります。
昨シーズンからの変更点として、タイヤサイズの幅が20㎜増幅しました。これにより、コーナリングの安定感が増すためコーナリングスピードも上がるのではないか?と期待されます。
私は、予選前に富士スピードウェイへ到着し、ピットへ入ると、「今年はシリーズチャンピオン獲得!」というチームからの気迫が伝わってくるほど、気合いの入った開幕戦であることが分かりました。
土曜日予選。
「タイヤサイズが変わり、まだ感覚をつかみ切れていない」と話す石井選手ですが、狙うは予選ポールポジション獲得。
チームにピリッとした雰囲気が漂います。
3クラスの合計20台が、30分間の予選に挑みます。クラス違いの車両もいる為、アタックするタイミングが非常に重要なポイントとなります。
DGMSチームは、コース上での混雑を避けるためコースインを遅らせ、前との距離を測りながら、自分のタイミングを見つけていきます。
前日までの走行に納得していない様子でしたが、ここは気持ちを切り替えて、渾身のアタックが始まります。
しっかりとタイヤを温め、車の挙動を確かめながら、コーナー1つ1つを大切に、そして出したタイムは1,49,736。自己ベストを更新し、見事ポールポジションを獲得しました。
石井選手が車を降りた瞬間に小川監督と抱き合い、チーム全員で喜びを噛みしめる瞬間がとても印象的でした。
予選を終えた石井選手
決勝日曜日。
意気込みを感じられる分、いつも以上に緊迫した雰囲気が漂います。
今回は新入社員研修やShonan/Toto BMWのお客様を対象とした観戦ツアーも開催し、約100名を超えるDGMS応援団が富士スピードウェイに駆けつけてくれました。
みんなが見守る中でいよいよレーススタート。
DGMSの車両にみんな釘付けになります。
スタートを決めるが、2番手スタートの選手の蹴りだしが良く、1コーナーに入る際に横に並ばれます。
抜かれるか!?と思いきや、さすが石井選手。冷静に相手の動きを判断しながらクロスライン(コーナーの入り口で抜かれてもコーナー出口では抜き返すようなライン取り)を取り、ポジションを守り、「1位を守るんだ。優勝する。」という気持ちが周回するたびに伝わってきます。
しかし、バトルを続けること3周目。
とうとう1コーナーで抜かれてしまいます。
というのも、このレースのレギュレーションでは、予選と決勝で使って良いタイヤが2セットまでと決まっています。
チームによっていつNEWタイヤを残すかという点が非常に重要ポイントとなりますが、DGMSは、タイヤ温存のため、予選は最低限の3周のみとできるだけ決勝で走れるよう作戦立て、レース1ではそのままのタイヤでいきました。
しかし抜いたライバルチームは新品タイヤ。走り出しのタイヤグリップの良さの差が出たレースだと感じます。
何とか食らいつきますが、BMW M2 CS Rasingは排気量もスピードも違うMINI JCW、MINI CPS、と混走で戦います。ここでまた難しいのが、BMWとMINIでは約20秒の差があり、他クラス車両を抜きながらポジション争いもしなければなりません。
他クラス車両に追いつき始めてからじわじわ1位との差が広がり始めます。最後5分を切ったところで、3番手と2位争いが始まり、何とか粘ろうと頑張りますが…。最終周、最終コーナーで並ばれ、なんと0,085秒差で3番手に順位を落としてしまいました。
決勝レース1を終えた石井選手
予選トップであっただけに悔しい3位表彰台。ただ、まだ終わりではありません。
このレースの特徴である、決勝レース2は決勝レース1の結果に対して上位60%はリバースグリッドで順位が決まるというレギュレーション。
これにより、石井選手は2番手からのスタートとなります。
フロントロー(最前列)からのスタートは勝利への大チャンス。決勝レース1の悔しさもあり、期待が高まります。
いよいよ決勝レース2。
今大会から決勝レース2のスタートは、ローリングスタートへ変更になりました。ローリングスタートは自身2度目と経験があまりないことを石井選手は懸念。
しかし、そんな心配もよそにきれいに決めたスタート。NEWタイヤに履き替えたDGMSは気合い十分です!
トップと並びかけますが、ここはしっかり前の選手の様子を見ながらトップに食らいつきます。
しかし、次第に3位の選手が少しずつ近づいており、2番手争いが始まります。
3周目、ダンロップコーナーで他車両に追突され、DGMS 55号車はスピン。順位を落としてしまいます。
ピットの中も一気に空気が張り詰めます。
接触の為、一度ピットに戻ります。接触をした選手には、ピットスルーペナルティが課せられます。
勝負権を失ってしまいましたが、ここであきらめないのがDGMS。
完走ポイントと決勝ベストラップポイントを獲得すべくレースに集中し直します。
同じドライバーとして、アクシデントが起きた後、動揺もしたり、悔しさ、怒りと非常に心が乱される状況に陥ります。
ここでどう切り替えられるか、メンタルコントロールが大事になりますが、石井選手はとても冷静に、そして確実に、トップと同タイムを叩き出していきます。
他クラスの車両もしっかり抜いていきながら、最後まであきらめず戦っていきます。
あっという間に20分+1周のレースも最終周。車両に違和感を感じながらも、しっかりと走り切り、決勝レース2は8番手完走。ベストラップは3番手のため4ポイントを獲得します。
ピンチが起きてもしっかりとポイントを獲得し、シリーズを見通して切り替えていきました。
決勝レース2を終えた石井選手
開幕戦を終えた小川監督
今年はシリーズチャンピオンを目指し、応援している方へ向け、感動を通して“感謝”を伝えながら、モータースポーツを好きになってもらえるように努めていきたいです。次戦は鈴鹿。優勝したサーキットであり、DGMSにとって良いジンクスのあるサーキットの1つなので、しっかりとここで結果を出し、次に繋げていきたいです。
非常に悔しそうな面持ちで語ってくれた小川監督がとても印象的でした。
そんな富士戦では、今回Shonan/Toto BMWのお客様に向けてDGMS Circuit Dayと題し、観戦ツアーを開催していました。
普段自身が乗られているBMWがサーキットで軽快に走っている姿、バトルしている姿を観戦していただき、実際に富士スピードウェイのコースをパレードラン体験。モータースポーツに触れて楽しんでいただくことをコンセプトにしています。
ピットツアーや、小川監督とモータージャーナリストの竹岡圭さん、私のトークショーやグランツーリスモ世界大会出場選手であるTakuAn選手から、直々にアドバイスをもらい、体験するグランツーリスモ アタイムタックにと盛りだくさんのイベントです。
お客様は終始笑顔で楽しまれている様子がとても心に残っております。
なかなか足を踏み入れずらいサーキットの敷居を低くできるよう、このようなイベントを通して、もっと身近に、そしてモータースポーツの楽しさを伝えていけたらと思います。
そして新年度4月ということもあり、今回はダイワグループのグループ各社から新人社員がモータースポーツ研修に参加していました。
“若者の車離れ”が騒がれている昨今ですが、そんなことを感じさせないくらい皆さん熱心にレースや車に関する話を真剣に聞いていました。
活動を知ってもらい、この中からDGMSに関わりたい!と思ってもらえたり、仲間が増えていくのかなと思うと私も今からわくわくしてきます。
DGMSのBMW M2 CS Racingへの挑戦は今年で3年目。
発起人である髙野代表は今後の展望を語ってくれました。
展望を語る高野代表
バーチャルからリアルレースへ非常に夢が広がる今後の展望に期待が高まります。
そして実は同じ週末、N-ONE OWNER'S CUPにもDGMS N-ONEチームとして参戦。まだレースを始めて間も無い森選手ですが、参加台数が100台ほど集まり、決勝レースに残るのも難しい中で見事N-ONEチームは予選を勝ち抜き決勝に進出。レースは接触も無くしっかり確実に走行を重ね完走することが出来ました。
N-ONEチームの成長が非常に楽しみです。
今回は、イベントにレースにと盛り沢山なレースウィークでした。
結果こそ残念でしたが、「どれだけチームが本気で勝負しているか」、「レースと向き合っているか」が伝わったと思います。そして真剣に取り組む姿勢であったり、チームのまとまりであったり、レースで培ったノウハウがディーラチームとして、ディーラー各店舗をご利用いただいているお客様のお車に反映され、良いサービスが提供出来ているのではないでしょうか。
上手くいきそうでいかない、それも勝負の世界でありレースの世界。
ライバル含めみんなが努力してくるからそれ以上の努力をしなければいけないし、続けなければいけない。
これは一人の力ではどうしようもなく、チーム全員で乗り越えないといけない壁となります。
しかしこの壁はDGMSならすぐ突破して、また最高の笑顔がたくさん見られるシーズンになるのではないかと私は感じます。
今回サーキットにお越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。
次戦は、世界でも有名な鈴鹿サーキット。
現地でも、生配信Youtubeからでも、ぜひDGMSを応援していただけたら嬉しいです。