BMW & MINI Racing 2023

M2 CS Racing Series

Round6(第11戦-第12戦)

鈴鹿サーキット[三重県]
  • 開催:12/2(土)-12/3(日)
  • ドライバー:石井 一輝
  • REPORT:岩岡 万梨恵

DGMS(ダイワグループモータースポーツ)のチームレポートを担当させて頂きます、レーシングドライバーの岩岡万梨恵です。
BMW&MINI Racing 2023年最後のレースROUND6は鈴鹿サーキットで行われ、M2 CS Racingは9台で争われます。

気持ちの良い快晴の元、予選が行われます。
今年ラストレース、ということで予選から熱いタイムバトルが繰り広げられます。
今大会の馬力は、最終戦ということで、アマチュアドライバーが420PS、プロドライバーが365PSのレギュレーションの元、行われます。

今回鈴鹿サーキットで開催とのことで、鈴鹿サーキットをホームコースとしている選手も多くいらっしゃいました。その中で石井選手は鈴鹿の経験はまだ少なく、勝利を手にしたことのないサーキットの一つです。
なんとかして、まずは予選でトップを取ることを目標に予選に挑みます。

土曜日、予選開始と共にコースインした石井選手。ここから今年のライバル水元選手との心理戦は始まっていました。石井選手はタイヤを大切に温めながら、3周目に2,17,293とトップタイムを出します。
そのタイムを見たライバルの車両も次々とアタックを始めますが、水元選手はなかなかアタックをしません。他車のクラッシュもあり、赤旗中断をはさみながらあと5分耐えれば予選トップ通過‼でした。しかし思った通りにいかないのがレース。最後に水元選手が0,2秒タイムを塗り替え、DGMSチームは予選2番手となりました。
「このままいけば、予選1位を獲得できる!」という期待から、人生で一番長い5分間を体験したように感じます。2番手ではありましたが、ホームコースとなる1位の選手との差はわずか0,2秒。決勝がとても楽しみです。

そして翌日、日曜日。
寒さはありますが、快晴の元、レース1が始まります。

「予選は手ごたえがありましたが、取りこぼした点がありました。しかしトップと良い勝負が出来るポジションではあるので、まずは、今年の集大成として良いレースがしたいです。」と石井選手。

深く考えすぎずに、ありのままの自分に集中してレースに挑むという石井選手、マシンをしっかり仕上げてきたチームの期待を背負い、いよいよ最終戦の火ぶたが切られます。

スタートと同時に1コーナーに全車が流れ込みます。
集団の中に入りますが、接触もなく、1周目は無事に2位を死守していきます。

ここで、少しトップとの差が生まれてしまいましたが、石井選手は、自分自身に集中し、落ち着いた走りで、周回を重ねていきます。
前との差は1秒。見えているのに、届きそうで、届かない、なんとももどかしいレースが続きます。
しかし、レースベストはトップとわずか0,055秒。ファステストポイントの争いもどちらも引きません。
どちらかがミスをしたら順位は確実に落ちるという、ひと時も気を抜けないレース。
毎周確実にミスなく車を走らせることは、精神力が試されます。

大きなミスもなくしっかり走り切りますが、悔しい、悔しい2位表彰台獲得でレース1を終えます。
車から降りた石井選手、ピットで見守るチームメンバー。
2位表彰台獲得ではあるものの、目指しているのは1位だけ。悔しい表情がとても印象的でした。

石井選手コメント

一瞬も気が抜けない、お互いミスしたら負けというレースで、楽しめはしましたが、悔しいです。次は今年最後のレース。もちろん優勝を目標に、勝つためにやっているから勝たないと面白くないので、やってやります。

と力強いコメントを石井選手から頂きました。

DGMSを当初から支えており、監督を務める小川さん。レース1を終えて…

ベストは尽くしたが、優勝を取ることが出来なかった。それは、何かが欠けているので、レース2は、優勝に向け、組み立て直していきたい。
悔しいだけでは終わらせず、学び成長に繋げられるように準備していきます。

と強い思いを感じました。

DGMS、2023年の目標はシリーズチャンピオン。しかし、初戦の大きなクラッシュにより、目標の変更を余儀なくされる状況に陥りました。
チーム発足からステップアップ、さらには世界戦にも参戦する等、とんとん拍子に見えていたDGMSでしたが、予断を許されない状態に…
しかし、この4年間で培ってきたチーム力を発揮していきます。
シーズンを戦うために、残りのレースへの戦い方をみんなで考え、1戦1戦を大切に挑戦していきました。

小川監督もチームをこれまで引っ張ってきた中の一人です。
今回の最終戦を控えて「今年は優勝が一度もできていない、今年はいろいろあったけれども“優勝する”という軸はブラさずに最後まであきらめずに目指していきたい。」と更なる気合を感じます。

そしていよいよレース2。
チーム全体の空気がいつも以上にピリッと引き締まります。
スタートはレース1のリバースグリットにより4番手スタート。

「何としてもスタートを決めていきたい、3台抜いて優勝を勝ち取りたい」と石井選手。
泣いても笑っても2023年の最後のレース。いよいよ幕が上がります。

レーススタートと同時にサーキット内にエンジン音が響き渡ります。
スタートした1コーナー、石井選手は、出だしで遅れてしまい6番手まで落ちてしまいます。
ここで終わりか…そう思ったのも束の間、2周目に1台、3周目に1台と周回を重ねるごとにみるみる順位を上げていきます。7周目に3番手まで順位を上げ下位の車両と差を広げていきます。
残り3周。前の2台は同じチーム同士アシストしあい、ポジションを守っている様子。
ここから最終戦の石井選手は今までとは一味違いました。
「落ち着いて、確実に」と言い聞かせているようなレース展開。トップ2台の様子も伺っているように感じます。

正直、ここまでか…、だれもが思ったその瞬間、石井選手は魅せてくれました。

残り2周となり、クラス違いの車両もいる中で混雑に巻き込まれます。しかし、ここで冷静さを保ち続けた石井選手は一瞬の隙をついて1台抜かし2番手浮上、“優勝”の光が差し込みます。そして、今まで冷静に相手の弱いところ、自分の強みを見抜いた石井選手は130Rでイン側から一気に1位の車両も抜いていきます。

うおー!と沸き上がるピット。そしてラスト1周。抑えきれれば、今年初の、そして念願の“優勝”。
後ろには鈴鹿をホームコースとしており、ずっと破ることが出来なかったライバル。パッシングのプレッシャーを受けながら、しかしそれにも全く惑わされず、堂々とした走りっぷりを見せます。

そしてチェッカーフラッグ。
今年はトラブルに見舞われ、参戦を見送るレースもありました。クラッシュを恐れるあまり抑えた走りになってしまい、不安になることもありました。
しかし、チームを信じて、ドライバー、メカニック、監督、マネージャーのそれぞれが一人一人を信じ合って挑んだ最終戦。

やりました、掴みました、優勝!!
そしてシリーズランキングも3位に浮上!

歓声とともに涙で溢れるチーム内。
奇跡の瞬間を目の当たりにした、そんな気持ちになりました。

石井選手コメント

なんと言い表したらわからないくらい最高。すごく良いレースで楽しかったです。今年4年目で一番きつい1年となり、思うように動けないもどかしさもあったり悩みましたが、最後にこんなことが待っているなんてという気持ちです。チームの皆さん、僕に関わっていただいている皆さん、会社の皆さん、やっと結果を出しました。育ててくださり、ありがとうございます。

涙をいっぱいにためながら話す姿がとても印象的で私自身も胸が熱くなります。

高野代表コメント

今年はクラッシュから始まり、ある意味限界を超えるくらいの走りに挑戦できるようになった。しかし、DGMSのポリシーはぶつけずに安全に走ることを大事にしています。それが日を追うごとに、安全に速く走ることが定着し、最終戦はさらに殻を破り成長を感じました。来年も継続しながら一つの通過点とし、新たなチャレンジをしていきたいと思います。

高野代表がDGMSを立ち上げ、のびのびと挑戦できる環境を用意したからこそ掴むことができたこの結果。
チーム全員が一つの目標に向かって思い切りチャレンジできるこの環境はとても素晴らしいと思います。

レース前、強い思いを語ってくれた小川監督コメント

本当に良かったと思います。最後まであきらめずにチャレンジしていく姿。そして目標にしていた優勝。最高です。今年はいろいろな可能性も見えたシーズンとなりました。また今年はレース以外でもチームを使って専門学校やお客様にレースを楽しんでいただくイベント等を通して、今年の一つの目標であった”感動を与える“ことが今回は達成できたと思います。
e-motorsportsの取り組みであるe-DGMSも盛り上がっている中で、来年はもっと発展させていけるのではないかと可能性を感じています。

私はDGMSに3年間帯同させていただいておりますが、小川監督の涙を初めて見ました。
チームのみんなで嬉しいときも、悔しいときも一緒に涙も流して味わえる、信頼できるチーム。
それがDGMS。

それぞれの性格、考え方、行動をまとめていくのはとても大変だったと思います。
そこから1年、また1年と過ごしていく中でコミュニケーションの取り方、協力の仕方、足りないところを補い合うチーム力、DGMSはレースを通して、この強みを手に入れました。
普段の仕事においても生かされるこの能力は、ほかに比べ物にならない程の大きい経験だと思います。

監督は続けて、「今後の目標は、チームの状態はとても良いので、そのチームの良さをもっと社内へ、そしてお客様へ、DGMSに関わりたい!と思う人を増やしながら、DGMSをやってよかったと思ってもらえるように活動を続けていきたい」とのこと。

このチームでなければ成しえなかったこの結果。
最高の2023年のシーズンの締めくくり、本当におめでとうございます!

DGMSは来シーズンさらにパワーアップすること間違いなし!
また来年もレースはもちろん、このチームの素晴らしさを発信していけたらと思います。

みなさま今年もご高覧いただきありがとうございました。
そしてDGMS、最高!